スウェーデンの医療改革に学ぶ
スウェーデンは福祉国家です。私の感覚からすると福祉国家ですから、手厚い医療をしているため、当然医療に使う国家予算も大きいと思っていました。そして日本同様に病院で死ぬ方が多いだろうと予想していました。
2012年のOECD加盟国の医療分野比較を観ていただくと日本の医療が異常なのが分かります。
特にスウェーデンと日本の違いは総病床数(ベッド)や平均在院日数、人当たりの外来診察回数などに違いがあります。逆に対GDP比や男女の平均寿命はそれほど変りません。
日本とスウェーデンの医療で大きく違う点があります。それは寝たきり高齢者の人数です。これは病床数での差に現われています。一般に医療費は病床数が多いと高くなるというデーターがあります。
日本では寝たきり高齢者は150万人~200万人いるといわれています。スウェーデンではほとんど寝たきり高齢者がいません。ではどこがちがうのでしょうか。
実は1980年頃のスウェーデンも医療費が上がり続けていました。特に今の日本同様に無理な延命治療が行われていました。現在日本で亡くなる方の8割が病院で亡くなります。これが実は医療費が向上している原因であることにスウェーデンは気づきました。寝たきり高齢者を少なくすることが医療費を下げることになります。
スウェーデンはエーデル改革という大胆な医療制度の見直しを実施しています。
①市町村への大胆な権限委譲。
②医療施設から在宅医療へ
③看護師・ホームヘルパーへの権限拡大
スウェーデンでは高齢者の介護に必要な医療行為を看護師やホームヘルパーができるようにしました。また多くの高齢者が自宅で自立できるように支援を受けながら生活できるようになっていきました。日本と同じように高齢化している中でスウェーデンはこの改革で1980年代から医療費がほとんど変っていません。
日本の場合だと、介護施設に入った場合、病状が悪化すればすぐに病院に入院して、本人の意識に関わらず治療、場合によっては延命措置がされます。しかしスウェーデンの場合は住み慣れた自宅や施設で死を迎える場合がほとんどです。病院に入って終末期の治療期間は数日から数週間です。
宗教的には「死ぬ権利」があります。それは長期間不自由な病院で意識も無く苦しみながら死ぬより、可能な限り自宅で自由に過ごして、自宅や住み慣れた施設で死を迎えるほうが良いということです。
要するに病人も家族も医療現場もねたきりにならないように努力すること。それでも寝たきりになる場合は死が近づいているとして旅立つ準備に入ることがスウェーデン流の終末期医療であり、死の受け入れ方です。
日本では「高齢者が増えて医療費が増える」といわれますが、スウェーデンのように考え方を変え、具体的な改革に乗り出せば、医療費を抑えることができた実例です。なによりスウェーデン型の終末期医療の方が人間として幸福だと思います。
日本の医療制度には素晴らしいものがあるも事実ですが、世界と比べて異常な部分は改善できるはずです。
死への考え方も変える必要があります。宗教的にいえば、あの世へのスムーズな旅立ちはスウェーデン型です。
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